クスメ・アキラの木工模型の世界へようこそ





2011年2月21日月曜日

ひさし付きのカーを作ってみよう

みなさん、こんにちは。

前回は、「アーリー・カー(early cars)」や、「オールド・カー(old cars)」と称して、馬車から自動車へと発展する過程を、模型で探りました。今回は、「ひさし付きのカー」を作りたいと思います。

ここでいきなり質問ですが、お宅に「ひさし」はありますか?
最近の住宅では、この「ひさし」が無くなってシャッターの戸袋に変わっているので、この言葉自体が死語になっているのかも知れません。「ひさし」とは、玄関や窓の上にある、外に突き出た簡単な屋根のようなものです。「日+支え」が語源といわれていますから、要するに「日よけ」なのです。
「ひさし」など見たことない、とおっしゃるなら、庭に作られたカー・ポートをイメージしてください。陽が上って温度が上がってくると、ビチビチパチパチとやかましい音のする、あの車庫のことです。1台用のカー・ポートで、屋根が片側だけで支持された車庫、あれが「ひさし」型のカー・ポートです。
ただ残念なことに、そのスタイル故、構造的には弱いものです。今年のように雪がたくさん降ると、このような簡単な構造では、すぐにペシャンコになってしまいます。そこで普通は、「腕木(うでぎ)」と呼ばれる補強材が途中に入れてあって、この構造を支えることになっています。腕木がなくても、アールを大きめに取るとか、鉄片をボルトで止めるとか、色々の工夫がしてあるはずです。果たして、ご自宅のカー・ポートに、この「腕木」があるかどうか、今すぐ外に出て確認してみましょう。

さて、この「ひさし」を女優の髪型に例えれば、日本の女優第1号、川上貞奴(さだやっこ)のものということになります。前方に突き出した彼女の髪型は有名だったと聞きます。野球選手で例えれば、横浜ベイスターズの三浦大輔の髪型(リーゼント・スタイル)ということになりましょう。だが、彼の髪型もまともな「ひさし」にはなっていません。もっとふさわしい例が映画界にあります。アキ・カウリスマキ(フィンランド人)という監督の「レニングラード・カウボーイズ」。ご存知ない方のために、ここでお見せしましょう。


どうです。とんでもなく、「ひさし」が飛び出しているでしょう。この「ひさし」を支えるためにどんな工夫がしてあるって? それは当たり前でしょう。「腕木」が中に仕込んであるのです。(笑)
ということで、今回作るのは、このように「ひさしが飛び出した自動車」なのです。

まず、いつものように、下の写真のような、15mmx40mmx120mmの平板を用意します。


次に、下の写真のように、両端に木片を積みあげます。


上の写真では、左側が先頭、右側が後部です。エンジン部分の木片の長さは30mm、その上の木片は、ずいぶん汚く見えますが、どんなものでもかまいません。あとで、きれいになりますよ。
後部の木片の縦の長さは35mmです。では、下の写真を見てください。


ほら、早速きれいになったでしょう。
次に、下の写真のように、先頭から55mmのところに高さ20mmの木片を入れます。これが、運転席と座席の「仕切り板」になります。


上の写真では、すでにハンドルが中央につけられていますね。
次に、下の写真のように、座席部分の両側を、35mmx65mmの平板で覆います。


上の写真では、すでに、後部の下部が斜めにそぎ落とされています。
では、これまでの作業をまとめて見ましょう。


あと少しのところまできました。
続いて、肝心のひさし(屋根)(50mmx110mm)を取り付けましょう。


どうでしょう、ひさしは、背面の木片でのみ支えられていますね。危ない、と言えば危ない。普通なら、木ネジを使って止めるところです(私は、木工ボンドで止めました)。だが、このスマートさのせいで、精悍な感じのするモダンな車が出来ました。
車輪も、上の写真のように、車体の下に取り付けることを忘れないように。
ということで出来上がりです。では、別の角度から、この仕上がりを2枚続けて見ていただきましょう。


下の写真は、光線の関係で色が違うように見えますが、同じものです。
こうしてめでたく、「ひさし付きのカー」が誕生しましたのでした。


続いて、私が同時期に作った他の「ひさし付きのカー」の様々のスタイルを見てください。

1)赤いひさしの付いたカー


先のフリンジ・タイプの「ひさし」で、不安定さは免れません。エンジンの上にはエンブレム、さらにウインドウも備えています。

2)高い横板のついた、ひさし付きのカー


防寒及び横風対策のため、かなり高い横板を両端から包み込むように貼りました。更に、大豆型のライトをつけました。

3)ひさしの上がったカー


ひさしの脆弱性をカバーするには、色々の工夫が必要です。これは、ひさしを少し上方にまげてみました。精悍さが感じられれば成功です。ライトは大豆型です。さらに、前と後ろの車輪のはめ方の違いに注目してください。

4)支柱が分厚い、ひさし付きのカー(カラー版)


今度は、ひさしの脆弱性をカバーするため、背後の支柱を分厚いものしてみました。
ところで、この思い切りのハデハデさにびっくりされたことでしょう。ただし、この塗り方にはちょっとしたコツがあります。あらかじめ、黒色で全体を塗ってしまうのです。すると、色の乗りがよくなるばかりか、塗り残しがあっても目立たなくなります。失敗の多い作品は、この方法で誤魔化すのです。

5)腕木のある、ひさし付きのカー


これこそが、「腕木」の入ったひさしです。屋根の分厚いことに驚嘆してください。この重量を支えるためにはどうしても、こうした「腕木」が必要ですね。

6)腕板のある、ひさし付きのカー


「腕木」で支えるタイプの車はどうしても不細工になります。このように「腕木」の代わりに「板」を使えば、デザイン的にも素敵で、また、丈夫にもなります。だが、難点は前方からの風の逃げ場がないこと、これで速度はぐっと落ちます。

7)腕板で屋根を挟み込んだ、ひさし付きのカー


上と同じスタイルですが、腕板がひさしを挟み込んでいることにご注目。これで構造的にも強固になっているはずです。さらにノーズを長くし、横板に窓風のデザインを施したことにより、現代の4WDやジープにもつながるカッコいい車になりました。上の写真では見えませんが、風を逃がすために背面に窓が切ってあります。次世代電気自動車には、ぜひともこのスタイルを採用してほしいものですね。
ということで、今回はおしまいです。

なお、私は今日作った「ひさし付きのカー」のような模型やお人形をホームページで公開しています。ぜひ、次のサイトを訪れて見てください。


また、このような模型とは別に、油絵(生絵)も描いています。それらは、次の、別のサイトで公開しています。下のアドレスをクリックして、ぜひ訪れて見てください。


また、次の「ピカサ・ウェブ・アルバムズ」というサイトでは、私が描いた絵の一覧がご覧になれますので、よろしく。


0 件のコメント:

コメントを投稿